HOME |「お知らせ・最新情報」 | 「職業奉仕委員会」 | へ戻る |
|
職業奉仕とは・・・その原理と実践 (ロータリーでいう職業奉仕を正しく学ぼう) |
ロータリーの源流(炉辺談話より):RI2680地区田中毅PDG著 |
編集 杉田博 |
|
PART1|PART2 | |
職業奉仕の理念は He profits most who serves best 「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」というモットーで表されています。 |
PART2-職業奉仕の実践例 (炉辺談話383より) |
私たちは何のために働いているのでしょうか。お金を儲けるため、それとも・・・。 ロータリーに職業奉仕の概念を導入したアーサー・フレデリック・シェルドンは、1921年に行った「ロータリー哲学」という表題のスピーチの中で、われわれの職業は、金儲けをする手段ではなく、その職業を通じて社会に奉仕するために存在すると述べています。現実にはありえないとしても、パン屋、洋服屋、米屋、銀行と、どんな職業であっても、ある日突然その職業を営む人が全員いなくなったとしたら、社会の人々は大いに困るに違いありません。そういう事態を迎えて初めて、すべての職業は社会に奉仕するために存在することが、判るのかも知れません。 ロータリーでは社会に奉仕するための事業を実業と定義しています。ほとんどの事業は程度の差こそあれ社会に貢献していますから実業です。 これに対して社会には全く貢献せず、自分が儲けることのみを第一義に考える事業は虚業だと言えるでしょう。なお例え実業であっても、社会に奉仕することを忘れて、自分の利益を優先した企業経営を行えば、その企業の将来は必ず不幸な末路をたどることでしょう。 事業主は実業であると信じていたかも知れませんが、明らかに虚業である幾つかの企業が起こした不祥事を振り返ってみましょう。 *テキサス州ヒューストンに本拠を置く総合エネルギー企業エンロンは、不正なガスと電力取引によって巨大な利益をあげました。しかし不正な株価操作と粉飾決算が内部告発によって表面化して結果的に倒産しました。 *堀江貴文氏は世間の誰もがやらないような方法で法律の抜け道を潜って、会社の実態の伴わない株式分割をしたり、時間外取引や投資事業組合やペーパー・カンパニーを使って、株の買占めや粉飾決算をしました。これらの二つの会社の共通点は、株価至上主義に走ったあまり、本来は会社の業績を示す指標であるはずの株価を、利益のかさ上げや、損失のとばし、デリバティブによって人為的に上げようとしたことにあります。 *物言う株主として脚光を浴びた村上世彰氏はニッポン放送株のインサイダー取引によって実刑判決を受けました。ファンドだから「安ければ買い,高ければ売る」のは当然だという擁護論もありますが、阪神電鉄買収劇を見ても、企業を自らの金儲けの手段としか考えていないことは明らかです。 *敵対的買収で有名なスチール・パートナーズについても同様なことがいえます。伝票の操作だけで金を儲けるこれらの事業を果たして実業と呼べるのでしょうか。M&Aと書くと格好よく聞こえますが、会社や従業員や消費者の利益のためのM&Aでなければ、これは「会社乗取屋」に過ぎません。 「会社乗取屋」は社会に奉仕する職業なのでしょうか。「会社乗取屋」を含めた世間の人達が疑義を抱くような方法で巨万の富を築くような事業は、ロータリーが定義する世に有用な職業ではなく、虚業に過ぎないのです。ロータリーは、こういった事業をまともな職業だと判断して入会を許した経済団体の轍を踏むようなことがあってはならないのです。 職業を通じて社会に奉仕することを忘れて、自分の利益を優先するところから、数々の不祥事が起こります。 2005年の春に、鶏インフルエンザを巡って、浅田農産という会社の倒産と社長の自殺という痛ましい事件がありました。近畿圏の生協に広く鶏卵を納入していたことからもこの会社が堅実な事業経営をしていたことが判ります。平常は10羽単位だった鶏の死亡率が、100羽、1000羽単位と対数曲線を描いて増えていったことに、もしや、鶏インフルエンザに罹ったのではないかと疑ったことは容易に想像できます。一瞬の判断のミスが致命的な結末に繋がります。もし、彼が食品の安全性を第一義に考えていたなら、きっと正直に届け出たのではないでしょうか。当然、会社にとっては一次的に大きなダメージがあったとしても、自ら命を絶つような事態には陥らなかったに違いありません。同じ時期に、同様な事態に陥った近所の養鶏場が、いち早く届出をしたために、一次的には大きな損失を被ったものの、行政から感謝状まで貰って、事業を継続していることから考えても、自己の利益を優先せずに事業生活を営むことの大切さをしみじみ感じた事件でした。 豚肉や鶏肉を牛肉と偽装表示したり、肉に水を注入して重さをごまかしたミート・ホープや、牛肉の原産地を偽装した船場吉兆の例は、偽物を売ったことで明らかに消費者の信頼を裏切った行為です。賞味期限を偽った雪印乳業、白い恋人、フジヤ、赤福餅も消費者の信頼を裏切った行為には違いありませんが、より新鮮で美味しい食品を消費者に届けようという善意から生まれた賞味期限というあまり学問的な裏づけのない日付設定と、食品の安全性の間に生じる矛盾についてはいささか疑問が残りますし、これらの会社の製品を食べて事故が起こった例を聞かないことも不思議です。 外国では食べ残しの食品を「Doggy Bag」に入れて持ち帰るのが普通なのに、日本ではすべて廃棄処分にするという法律も、食品のほとんどを輸入に頼っているわが国の現状から見ても考え直す必要があるのかも知れません。 不祥事を起こして糾弾される企業がある一方で、経営破綻を起こしたスパーダイエーの創業者中内功氏が社会的に厳しく糾弾されたことがないことも興味ある事実です。売上高日本一のスーパーを育て上げた一方で野心的な事業拡大が裏目となって、経営破綻を招きましたが、彼の流通革命の功績は高く評価され尊敬の念は薄れていません。彼の評価が高いのは,顧客の立場に立って大手メーカーとの衝突しながら,価格破壊を推進したことです。さらに阪神・淡路大震災に当たっては、三宮店の壊滅的な損害にも関わらず、被災者の生活必需品の供給に全力を挙げたことも大きな評価です。すなわち自らが儲けることよりも、社会に奉仕することを優先したのです。 企業に継続的な利益をもたらすはずのロータリーの職業奉仕理念を実践したダイエーが、なぜ経営破たんに陥ったか、その真の理由を解明する必要があります。 ホリエモンや村上ファンドの株式買収劇、スチール・パートナーズのM&Aなどの一連の事件を通じて、日本でもやっと「会社は誰のものか」という議論が闘わされるようになってきました。経営学的思考からは、会社は株主のものだという答えが返ってきます。経営者は株主の代理人として株主の利益を最大化するために働くわけであり、もしも株主の期待通りの働きをしなければ、いとも簡単に更迭することが可能です。会社の存在理由は利益の最大化であり、ほとんどのアメリカ人はその考え方で会社を経営しているようです。 しかし日本人の多くはそのように単純には考えず、会社は事業を通じて地域社会に貢献するために存在するもの、すなわち社員や顧客のものだと考える人が多いようです。株主は資金を提供するために存在するのであって、社員や顧客が満足度を持てば、結果的に利益があがり株主が儲かることになります。シェルドンの職業奉仕理念もほぼこれと同じ考え方です。 最近では、現代社会においては、経営者や従業員の暴走を止める力を持っているのは株主ではなく、顧客や取引先であると考える人も多く、Yahooリサーチ・モニターの調査によれば、会社は株主のもの 31.6 % 、従業員のもの 25.2 %、経営者のもの 15.6 % 、地域社会のもの 15.3 % という回答になっています。 Jリーグの所有者は誰かを考えてみてください。チームの株主となっている親企業やスポンサーとなっている自治体が所有者であることには間違いありませんが、人気を牽引する選手や監督や役員、サポーターである地元社会の人たち、メディアやスポンサーとなっているスポーツ用品メーカーも所有者だということができます。さらには、対戦相手のチームや観客なしにはチームの存在は考えられません。すなわちチームに関わるすべての関係者が支えあっている社会なのです。 ロータリーも企業に同様な配慮を要求しています。職業は社会に奉仕するために存在し、健全な事業を営もうと思えば、経営者の努力に加えて、従業員、取引業者・下請業者、顧客、同業者などの地域社会や行政などのすべての協力が必要だと考えています。ロータリーではこれらの関係者すべてを総称してFellowsと呼んでいるのです。 人間関係学の面から、事業に成功する方法を考えてみたいと思います。私たちがロータリアンの身分を保っているのも、ロータリーの会合に出られるのも、ひとえに自分の事業が上手くいっているからです。これは、経営者である皆さま方の力量によるところが大ですが、皆さま方の会社で働いてくれている従業員、事業所に色々な品物を納めてくれている取引業者や下請け業者、事業所から品物を買ってくれる顧客、さらに、私たちの事業が、その町の中で普遍的に営んでいけるのは同業者がいるおかげであることを忘れてはなりません。私たちを取り巻く全ての人たちのおかげで自分の事業が成り立っているのだと考えるならば、自分が得た利益を、自分で一人占めするのではなく、こういった自分の事業に関係する人たちと適正にシェアをしながら、事業を進めていけば、必ずあなたの事業は発展していくはずです。そのような経営方針を採用して事業が発展していく様を、あなたの事業所をサンプルとして実証すれば、あなたの同業者の人たちは、あなたの事業態度を真似るに違いありません。そうすれば、あなたの所属する業界全体の職業倫理が上がっていくというのが、He profits most who serves bestの本来の意味です。この考え方は今も昔も変わらない真理です。 企業は社会性、公共性、公益性という社会的責任を負っています。社会性を果たすためには、顧客の求める商品やサービスを、適正価格で、適時に提供する必要があります。公共性を果たすためには、環境保護、独占禁止法違反、粉飾決算、詐欺商法等の反社会行為や公共の福祉に反する商行為をしないことが必要です。公益性を果たすためには、国家や社会に対する貢献度が問われます。 最近の風潮として、単なる売上高や収益率によって企業をランク付けするのではなく、優良企業の判定基準に社会的責任や製品やサービスの品質の高さを加味する傾向が加わってきました。フォーチュン誌が発表した2007年度のアメリカで賞賛される企業の判定基準には革新性、人的管理、資産活用、社会的責任、経営の質、財政の健全さ、製品・サービスの品質、長期投資などの項目があり、ジェネラル・エレクトリックス、スターバックスに次いでアメリカ・トヨタが第3位にランク付けされています。 シェルドンは、持続して繁栄し発展しているいくつかの企業に共通して見られる特徴を、サービスと名づけました。 販売する商品や提供するサービスの品質が高いことが大切です。特に食品の場合には味覚に加えて安全性が重要なポイントになります。価格が適正であることも大切なことです。品薄の機会を捉えて一時的には暴利を貪ることができても、一旦価格が安定すれば顧客は戻ってはきません。店主や従業員の顧客への態度や気配り、豊富な品揃え、公正な広告、商品や業務に対する知識、アフターサービス、顧客が感じる満足感と公平感、こういったもの全てがサービスであり、サービスの良い店には必ず顧客がリピーターとなって訪れたり、別の顧客を紹介してくれます。 更に顧客の満足度の高い事業所は、結果として高い職業倫理を持った事業所だと言うことができます。顧客の満足度を高めるサービスこそが企業の永続的発展と成功を保証する唯一の方法なのです。 シェルドンの職業奉仕理念をまとめて見ましょう。 自らが儲けるために職業に就いているという考えを捨てて、顧客の満足度を最優先しつつ、自らの職業を通じて他人に奉仕をするという考えで事業を営めば、その真摯な態度が顧客の心を捉えて、リピーターとして何度も事業所を訪れたり、新規の顧客を紹介してくれるはずです。 その結果大きな利潤が得られるとともに、その事業所は継続的に発展していきます。 そして、そのような事業所は結果として高い職業倫理を持っているはずです。職業奉仕は職業倫理を高揚することではなく、職業奉仕の実践が結果として高い職業倫理につながるのです。 2008年1月31日 |
HOME |「お知らせ・最新情報」|「職業奉仕委員会」へ戻る |